覆面調査とは
覆面調査とは、ミステリーショッパーとも呼ばれるマーケティングリサーチの方法の1つです。覆面調査員が顧客として対象店舗や施設などに訪れて、接客サービスや商品のディスプレイ、店内の衛生面など、様々な視点から店舗状況を調査することで実態を把握することができます。依頼する店舗が狙っている顧客層に近い年齢や性別、生活背景を持つ一般の人が調査員として顧客体験を行い事前に設定された設問に答えることで、よりリアルな店舗運営の現状を把握することができるのが特徴です。また、複数の調査員によって集められたサンプルを元に結果が集計・分析され、より良いサービスや商品を展開するために求められる課題を洗い出すことにも繋がります。
調査は決して問題点だけを指摘するものではなく、あくまでも店舗の現状を正しく知ることを目的に行われるので、将来的な目標設定や具体的なスタッフ教育、店舗運営に生かすことができるという面も忘れてはなりません。評価されるべきポイントもしっかりスタッフに伝わることで、日頃のモチベーションアップやスタッフ間の関係性向上に繋げることができます。
覆面調査のメリット
1.客観的に評価できる
基本的な覆面調査員では、実際に店舗の商品やサービスを利用する顧客像に近い一般の人が調査を担当するため、客観的に店舗の状況を知ることができるのがメリットです。企業によっては社内で用意したチェックリストなどを活用して現状把握を行っている場合もありますが、内部のスタッフでは知らず知らずのうちに客観性が失われ、大切なポイントを見落としてしまうこともあります。顧客にとって重要と感じるポイントから現状をとらえることができる覆面調査では、よりリアルな現状把握ができるので、今後に繋がる具体的な施策を見出すのに優れた方法と言えます。
2.業界に精通している
調査会社によっては、所属する調査員は一般の人だけでなく、その業界や分野での経験や知識が豊富な調査員のプロとも言える人が揃っているところもあり、他店との比較や、業界ならではの細かいポイントを含んだより詳細な調査を行える場合もあります。3.日常が観察できる
覆面で調査が行われることで、店舗のスタッフは事前に構えることなく日頃から行われている自然な状態を把握することができるのも覆面調査のメリットと言えるでしょう。そして現状把握はもちろんのこと、これらの調査で得られたデータを元に、店舗運営やサービスの質の向上に繋げることができます。調査内容
調査内容は、顧客がその店舗や施設での一連の購買活動によって得られる様々な経験に基づきますが、調査対象となる業界や店舗において重要な項目を元に調査内容が詳細に決められる場合も多くあります。店舗の場合は店舗内の衛生管理、商品のディスプレイ、スタッフの応対など、様々な視点から総合的にチェックすることができます。設問形式
設問の形式はイエスかノーで答えるタイプの結果がわかりやすいものから、段階評価によってより細かい調査が行えるタイプもあり、設問の内容によって配点を変えることで、企業が重要視しているポイントやスタッフ教育に力を入れているポイントにフォーカスし、オリジナルの調査内容を企画することも可能です。また、調査員が主観的に感じたことなどを記述式で記入する方法もあり、よりリアルな購買体験に基づいて現状を知ることができます。記述式の場合は、1人1人の顧客によって異なる状況が細かく記載されるので、その顧客が特に印象を受けたポイントや、時間の経過による心理変化も分析できるなどのメリットがあるため、複数の設問形式を組み合わせるのも良いかもしれません。
調査対象
覆面調査と言うと小売店などでの購買体験、レストランなどでのサービスでの調査をイメージする方も多いですが、近年では様々な分野においてサービスの向上を目指す企業が増えていることもあり、ヘアサロンやスポーツジム、窓口対応、電話対応など、顧客が利用する様々なサービスに対して調査を行う会社も多くなっています。特定の業界に関する知識や経験が豊富な調査員が多く所属している調査会社もあり、その業界で重要とされているポイントを踏まえた視点や、店舗が目指す顧客のイメージに近い視点から調査を行うこともできるので、目的に応じてアレンジすることでより効果を高めることができるでしょう。
また、長期的な覆面調査を導入する場合は、同じ調査内容で半年に1回など定期的に調査を行うことによって、その後の成長度合いなどを確認することができます。
調査の流れ
実際に覆面調査を依頼する場合には、準備期間も含めて最低でも数週間の期間を要します。調査内容や規模に応じて必要とされる期間や内容は変わってきますが、ここでは基本的な流れをご紹介していきます。まずは覆面調査を行うにあたり、自社が覆面調査を行う目的や期待する効果、業界に応じて適した調査会社を選択します。
調査内容や料金は調査会社によって様々なので、初めて導入をする場合は複数の調査会社を調べてから選ぶのがおすすめです。
依頼する調査会社が決定したら、調査内容や調査基準、回数、調査員の条件を検討します。そして調査員の研修を経て実際の調査を実施し、調査員は調査レポートを作成します。その後、集計されたレポートを元に調査結果の分析が行われ、依頼者にフィードバックされるというのが基本的な流れとなります。
「基本的な調査の流れ」
- 調査会社の決定
- 打ち合わせ、調査内容の決定
- 調査員の研修
- 覆面調査の実施
- 調査結果の集計、分析
- フィードバック
- 研修などのアフターフォロー
調査会社によっては、調査結果によって得られた課題や改善点などを元にスタッフ研修や勉強会を行なっているところもあります。
自社でしっかりした教育システムが用意されている場合などは必要ありませんが、調査から分析、フィードバックまでをワンストップで依頼することで、現状把握だけにとどまらず、その後の具体的な改善策の実施に繋げることができるので、状況に応じて検討してみるのもおすすめです。アフターフォローが行われることでスタッフも成長を感じることができ、日々のモチベーションを高める効果も期待できるでしょう。
費用について
覆面調査の費用は調査内容や調査員の条件などに応じて大きく変わるのが特徴で、簡易的な調査では数万円程度で行えるものから、より細かい内容をアレンジする場合は10万円を超えるものまであります。調査が行われた後もフィードバックを依頼するかどうか、長期的な計画に基づいて複数の調査をするかどうかでも費用は異なります。さらに、依頼する会社によっても様々なプランや内容が用意されているため、詳しい費用は依頼をする前に調査会社に見積もりをしてもらうことをおすすめします。
調査概要と費用
※左右にスライドさせてご確認ください。
調査の概要 | 店舗の基本的なチェックポイントを調査 | 簡易的な覆面調査を行う | 入店から退店までの流れに沿って覆面調査を行う | 調査事項の追加など、より詳細な覆面調査を行う | 詳細な覆面調査に加え、分析やフィードバックがある |
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調査費用 | 5000円程度 | 10,000円程度 | 13,000円程度 | 15,000円程度 | 30,000円程度 |
依頼するときの注意点
1.調査の目的を明確にする
覆面調査を依頼する際には、まずは調査の目的や期待する効果、納期、予算など大きな枠組みをある程度決めておくことが大切です。それぞれの調査会社で行われているサービスや調査員の種類には様々な特徴があるため、自社にとって相性の良い調査会社を選ぶことが高い成果を得られるポイントになります。2.事前調査を実施する
また、事前準備をしっかり行なってくれるかどうかを確認しておくことも重要です。企業や店舗によって重要視している項目が異なるため、それらを抑えた上で調査が行われないと期待した効果が得られないこともあるので注意しなければなりません。3.ターゲットに近い調査員を選ぶ
調査員を選ぶ際にはその店舗や取り扱い商品のターゲットに近い調査員を選ぶことも大切です。実際にサービスを利用する顧客層に近い人物が調査をすることで、より現実的な視点からチェックすることが可能になります。最近では覆面調査を行う会社が増えたこともあり、調査員として登録している人が経験の浅いアルバイトということも少なくありません。できるだけ多くのサンプルを集めて集計を行う方法であれば一般の顧客に近い人のほうがリアルなデータを吸い上げやすいということもありますが、少ないサンプルの中から調査を行う場合には、調査のポイントをしっかり把握している人の方がより質の高い調査結果を得られるでしょう。
調査会社によっては、事前準備として調査員が研修を受けてから店舗の調査が行われることもあります。このような制度が整っているかどうかといった点も事前に確認しておくと安心です。
調査会社の選び方
覆面調査でより高い成果を出すためには調査会社選びも重要になってきます。調査を依頼する際には自社のデータを提供することになるため、調査会社は信頼できる会社であることは絶対条件です。1.調査内容から選ぶ
大手の調査会社から、業界に特化した会社、近年ではインバウンド需要に強い調査会社など、様々な特徴を持つ調査会社があります。より多くの調査結果から分析を行いたいという場合は調査員の登録者数が多いところを選ぶ必要がありますし、数よりも質を重要視する場合は精度が高い実績のある会社のほうが適していると言えるでしょう。
このように、調査会社を選ぶ場合には大手かどうかではなく、自社の業界やサービスにマッチしている調査会社であるかをしっかり検討した上で選ぶことが大切です。
2.予算から選ぶ
できるだけ費用を抑えてまずは現状把握を行いたいという場合もあれば、しっかり時間もお金もかけて徹底的に調査、分析、施策を行なっていきたいという場合もあると思います。各調査会社によって料金の設定方法は様々で、依頼する内容によっても異なるため、事前におよその予算を設定した上で複数の調査会社に見積もりを出してもらうことで、より費用対効果の高い調査を行うことができるでしょう。
多くの調査会社では基本的な費用の目安は開示しているものの、依頼する企業に応じて様々なプランやオプションが用意されている場合がほとんどなので、ホームページなどに記載されている金額と実際にかかる費用が異なることも少なくありません。
最終的な費用が思った以上に高額だったり、期待していた内容と費用が見合っていなかったりといったトラブルを防ぐためにも、事前にすり合わせを行っておくことが大切です。
まとめ
覆面調査は、調査員が顧客として店舗やスタッフの現状を客観的にチェックすることで顧客満足度やサービスや商品の質を向上させるために役立つマーケティングリサーチ方法です。調査結果を元に店舗の現状把握ができ、店舗環境の改善やスタッフ教育の見直しに役立てることが可能です。覆面調査を行う会社は数多くありますが、調査会社によって内容や調査員の条件、料金などは様々です。自社の目的や要望に合った調査会社を選ぶことでより高い成果を期待することができるので、事前に調査会社の特徴を比較検討した上でより効果的なリサーチを行ない、自社サービスの向上を目指していきましょう。