ホテルがミステリーショッパー調査を利用するメリットや理由とは?

ミステリーショッパーは、一般消費者が一般客に紛れて飲食店やスーパーなどを調査するもので、覆面調査とも呼ばれます。調査員は清掃状況や従業員の接客態度、提供される食事などを評価し、良い点や改善点などを報告書として提出することで謝礼を受け取れるため、実質無料で外食などができます。

一方調査される企業やお店にとっても、消費者目線での評価が得られ、経営判断や店舗改善の目安にできるメリットがありますが、ホテルはミステリーショッパーをどのように活用しているのでしょうか。

ホテルのミステリーショッパーの調査内容は?

ミステリーショッパーの仕事には様々な案件があります。ファミリーレストランや居酒屋、焼き肉店など全国展開している飲食店をはじめ、食品スーパーやドラッグストアなどの場合は、店舗に来店し店舗内外の清掃状況や、従業員の接客態度、陳列棚や提供される食事の温度や配膳状況などのチェックします。

他にも銀行やガソリンスタンドの案件などもありますが、中でも人気なのが家族旅行などにも利用でき、調査報告書を提出することで実質無料で泊まることができるホテルのミステリーショッピング調査です。実質無料で泊まれる上、報酬ももらえるので民泊や格安の宿泊施設を探して利用するよりもお得です。

ビジネスホテルだけでなくシティホテルの調査もあるため、出張をはじめ観光や家族旅行の際の費用節約にもなります。調査内容の例としては、建物の外観や外周だけでなく、併設駐車場や客室内などの清掃状況、フロントやポーター、客室係などスタッフの接客態度などです。

朝食を取り、レストランやサービス内容、予め指定された質問をした際のスタッフの受け答えや内容についての調査もあります。調査に際しては、ただ宿泊してくれば良いのではなく、調査を請け負っているマーケティングリサーチ会社などから、調査員へ事前に細かな指示が与えられます。

フロントでの宿泊受付で、これまでの宿泊履歴を訊ねられた際には「初めて」であることを伝えるというものや、指定の部署のスタッフにお手洗いの場所を訊ねるというものもあります。

ここに挙げた以外にも、調査項目は多岐に渡るため、注意して過ごさなければ見過ごしてしまうものもあります。しかし、あくまで調査員は覆面で行うため、調査項目をメモして持ち歩いていたり、あまりに挙動がおかしかったりすれば、従業員にも勘ぐられてしまいます。

普段通りのサービスや接客態度を評価することが重要なので、自然体で臨む必要があります。

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ソフト面の充実でリピーター獲得!

ひと昔前、日本にも外資系ホテルが増え始めた頃には、観光などでは豪華なホテルに泊まるのが主流で、宿泊そのものが旅行の大きな楽しみでありイベントのひとつでした。

最近では民泊を利用する人も増え、宿泊施設より観光地での食事や体験、アクティビティーなどにお金をかける傾向にあります。高級ホテルに泊まるのは特別なイベントごとや人生の節目の時だけという人もいるでしょう。

これにより比較的安価で泊まれるビジネスホテルが増え、全国に多くの支店を持つチェーンも急増し、出張のサラリーマンの多くが利用しています。

そして両者ともに、いかに利用客を増やし、他の宿泊施設との差別化を図ることが課題となり、観光地や繁華街へのアクセスといった立地、また施設、設備などのハード面だけでなく、サービスや食事、料飲などのソフト面の充実度合いを重要視するようになりました。

利用者にとっては、立地の良さだけであれば他にも選択肢があることになり、観光やレジャーにかかる費用を抑えるためには宿泊費を優先的にを削ることも検討されます。

継続的かつ安定的な収益を上げるためには、リピーターを獲得することが課題です。そこで多くのホテルが、宿泊客だけでなく日帰り客に向けて会員制度や記念日特典、地域性を活かした催しなど、様々な工夫をこらしています。

高級ホテル、ビジネスホテルそれぞれに求められるものは違いますが、その業態の性質上、宿泊施設としてだけでなく利用客の期待値を上回るサービスが求められます。

ホテルにとっては、ミステリーショッパー調査員のような一般の利用客や宿泊客目線での、忌憚のない評価や感想は貴重なものです。改善の余地がある部分をフィードバックしてもらうことで、働いている従業員には気づけない改善点を知るきっかけにもなります。また利用客目線での良かった点も、併せてフィードバックしてもらうことで、良い点をスタッフ同士で共有し広め、さらに伸ばしていくことも可能です。

このような地道な取り組みを続けていくことがファンを増やし、次回もまた選んでもらえる存在になるカギになります。

スタッフのモチベーションを上げる!

ホテルがミステリーショッパー調査を利用する理由のひとつに、従業員のモチベーション維持があります。ホテルに限ったことではありませんが、特にホテルは様々な部署、部門に属するスタッフが連携しあってサービスを行います。

フロント係にしても客室係にしても、接客する際は一人ですが従業員同士の連帯感が強い職場です。またホテルで働く人たちはホスピタリティーに高い意識を持って働いていて、専門学校などでワンランク上の接客術などを学ぶ人もいます。

それゆえ同じ部門の従業員同士で助け合うことはもちろん、お互い切磋琢磨しながらおもてなしの心を高め合うこともあり、接客スキル向上に研鑽を積んでいます。

そんな意識を持ったスタッフたちにとって、ミステリーショッパーの覆面調査での評価は、接客スキルを高めていく上での良いモチベーションになっていると言えます。

ホテルのミステリーショッパー調査では、現状できていないことより、現在の強みを伸ばすポジティブなフィードバックを積極的に行うことで、ホテルならではのホスピタリティマインドを醸成する傾向にあります。

コンサルタントではない一般消費者の評価が欲しい!

改善点を知るためなら、ミステリーショッパーではなく専門の調査員やコンサルタントを雇うこともできます。ホテルがミステリーショッパーを依頼するのは、実際に利用する一般利用客目線での評価を知りたいからです。

コンサルタントが社内に入ってしまうと、従業員は身構えてしまって普段通りの仕事やパフォーマンスが出ない可能性もあります。ミステリーショッパーであれば、調査員とはいえ実際の宿泊客と同じひとりの消費者としての目線を持っています。

コンサルタントはあくまでホテルと契約を結ぶため、依頼主の業績向上のために全力を尽くしますが、一般利用客の感覚と必ずしも一致しているとは限りません。ミステリーショッパーは、実際に利用する人の立場で、正直な意見や感想を知ることができる点が大きなメリットです。

インバウンド対応力を高めて外国人客を獲得

訪日外国人の増加に伴い、日本が誇る「おもてなし」を世界に向けてアピールしようと、国をあげて様々な取り組みがされています。ホテルにとっても日本風ホスピタリティをアピールし、外国からの宿泊客を取り込むチャンスである反面、従業員の英語力やワールドスタンダードな対応力不足で、外国人客からの評価が下がってしまうことを懸念しています。

そんなインバウンド需要の高まりを好機と捉えるホテルが利用しているのが、英語を母語とする外国籍調査員によるミステリーショッパーです。従業員の英語力や接客スキルを、外国人目線で評価してもらうことで、外国人に与える印象を把握するのが狙いです。

現状行っているサービスや取り組みでも、外国人目線で見ることで、すぐにでも海外の利用客向けに改善できる点はたくさんあるでしょう。日本人にはなかなか気づくことが難しい、文化や習慣の違いなどによる改善点が見えることもあれば、思わぬことが外国人から高い評価を受けることもあり、外国人宿泊客の取り込みに力を入れるホテルには、ミステリーショッパーによる覆面調査は貴重な存在であると言えそうです。

まとめ

企業や業界によってミステリーショッパーを利用するメリットは様々で、中にはプロの調査員やコンサルタントとの契約の方が向いている会社もあります。

しかしファミリーやサラリーマンなど一般の消費者を顧客とするホテルにとっては、一消費者であるミステリーショッパーによる調査やフィードバックが、本当に知りたい生の声となっているようです。

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